2017年10月21日土曜日

備前


最初見たときは、ブロンズの鋳物に見えました。


てかてか光っているし、ずっしりと重いのです。


ところが、お尻には「備前」と銘がありました。 備前となれば、土です。
首の後ろには、あれっ?瀬戸の磁器の猫の約束事の、くぼみがあります。そういえば、なんとなく瀬戸の猫に似ています。


並べてみました。
瀬戸の招き猫から型を取ってつくったものかと思いましたが、土は焼いたら縮みます。この備前の猫は、瀬戸の猫の定番と同じ大きさですから、一回り大きくつくった原型(雄型)を元にして雌型をつくり、型抜きしてつくったものでした。

瀬戸の猫は磁器、備前の猫は陶器という違いがありますが、瀬戸の猫が、250から280グラムなのに対して、備前の猫は、750グラム、約三倍もの重さがあります。


瀬戸の猫も、備前の猫も、つくり方は同じでしょう。身体と頭は前後二つに割れる雌型(めがた)に伸ばした生地を貼りつけて乾燥させ、それを型からはずして貼り合わせたものなので、中は空洞ですが、それに挙げた手を別につくり、くっつけて焼きます。


備前焼きは、ほかの産地の陶器のように、素焼きをしてから釉薬をかけて本焼きをするのではなく、釉薬を使わないでいきなり本焼きする、「焼き締め」という方法でつくります。
長時間、ときには一週間も、薪で窯焚きします。もしかしたらこの挙げた手が、ちょっとお辞儀しているのは、窯の中で傾いてしまったのかもしれません。


普通、陶器や磁器で招き猫をつくるときは、底はまったく閉じてなかったり、大きな穴が開いている状態で焼きますが、備前の猫は底が閉じてあって、底と首後ろのくぼみに二つ、小さな穴が開いているだけです。


尻尾のつくりも、焼いてから彩色する瀬戸の猫と、彩色しない備前の猫では、形が違います。


お顔も、色を塗る予定がないためか、瀬戸の猫より丁寧につくってあります。
瀬戸の猫に比べると、頬はふっくらとしています。
 

どうして、備前で招き猫をつくったのでしょう?

私が子どものころまで、いんべやき(=備前焼)はただの実用品でしたから、岡山あたりではたいていどの家にも、一つや二つはあったと思います。祖母の家にも、花びんやすり鉢などありました。
招き猫はそんな、時代につくられたものでしょうか?
そんな実用陶器を、芸術品にまで高めたのは、金重陶陽さん(1896-1967年)たちでした。

岡山県備前市あたりでは、古墳時代から窯が焼かれました。
平安時代まで須恵器でしたが、鎌倉時代初期には、還元焔焼成による焼き締めが行われるようになり、鎌倉時代後期には、現在と同じ、酸化焔焼成による陶器が焼かれるようになりました。
堅牢なので評判がよく、水がめやすり鉢などの実用品をつくっていましたが、室町時代になると茶道が発展し、茶陶としての人気が高まりました。
ところが江戸時代に入ると茶道は衰退して、再び、水がめ、すり鉢、酒徳利など、実用品の生産に戻りました。それを、昭和に入ってから、金重陶陽さんらが桃山陶への回帰をはかって、備前焼の人気を復興させたのです。

学生時代に備前に行ったとき、金重陶陽さん、藤原啓さん(1899-1983年)、藤原雄(1932-2001年)さんなどにお会いしました。
陶陽さんが、電気轆轤も蹴轆轤も使わず、お連れ合いが轆轤に空いた穴に棒を突っ込んで回すのに合わせて作陶していらしたのが、印象的でした。
啓さんは、自分でつくった豪華な大皿にご馳走を並べて、豪放磊落にお酒を飲んでいらした印象しか残っていません。
そんな、どちらも後に人間国宝になられた、対照的なお二人でした。






2017年10月20日金曜日

ヒデヨシs


アタゴオルのヒデヨシの貯金箱です。
お腹にしっかりとコインを入れる穴を持っていて、ヒデヨシの気楽にやろうぜ感とともに、ちゃっかり感がよく出ています。


漫画でのヒデヨシの髭はまっすぐですが、立体になるとくるっと巻いています。


「風呂猫」の商品(たぶん)で、底にはますむらひろしの陰刻があります。


ヒデヨシは、もう少し大きいものを持っています。
2001年に、つくられたものです。嬉しいことに、3.11の地震で、割れませんでした。


蛸を持ったヒデヨシは、仲間ができて(と言っても自分ですが)、ますます浮かれているような気がします。






2017年10月19日木曜日

収納棚

作業棟の、収納場所として最初から予定していた場所は六面ありますが、あと三面残っています。
その三か所に、今もあちこちにあぶれている、たくさんのものを収めなくてはなりません。


三か所のうちの二か所を、同時並行的につくっていますが、うち一か所は奥行きが浅くて、外に向いています。
浅い方に、取り出しやすいように刈り込み機(ヘッジトリマー)、チェーンソーなど庭仕事の道具をまとめようと思ったのですが、刈り込み機がなんとも長すぎて、どう収めればいいか考えがまとまりません。
しかたなく、深い方に庭仕事の道具をざっくりまとめて入れる棚をつくることにしました。


並べてみましたが、この上にもう一段同じ深さの棚をつくって、放り込もうというわけです。
そしてその下には、重くて嵩張り、とうてい高いところには上げられないものを仕舞います。
幅広の材を削れる大きい電気がんな、糸鋸、角のみ機、金属切断機、などなどです。
どれも、引っ張り出すのでさえ重いので、一つ一つキャスターをつけた板の乗せて、取り出しやすいようにします。
 
収納棚をつくるときの悩みは、ちょうどいい高さに頻繁に使うものをしまい、下や上の方には、あまり頻繁に使わないものを入れなくてはならないのですが、ちょうどいい高さはそう多くないということです。


段ボール箱に入っていた溶接機は、十年ほど前につくった作業用棚を改造して収めることにしました。
このまま利用したいのですが、残念ながらちょっとだけ、高さが足りなくて、溶接機が入りません。


せっかくつくり直すならばと、幅は溶接機に合わせて、細くします。
その方が、より多く収納できます。


完全には解体せず、組んであるままで切りました。


そして、溶接機が入るようちょっと高くするために、別の木を足しました。
 

棚の裏に貼っていた薄い合板は、丈を高くした分、短くなってしまいましたが、そのまま使います。


下の段に溶接機が収まりました。
上の段は横を閉じて、コード類や細々したものを仕舞います。


上に、蓋をつけました。取っ手は、引き出すときに便利なようにとつけたものです。
 

コンパクトに収まりました。


ほとんどの機械は、キャスターをつけた板に乗せるだけです。
台となる厚さ24ミリの合板は、かつて六年間暮らした、仮設ビニール小屋の床にしていた材です。


重くて、扱いに手間取っていた道具たちも、これですいすいと動きます。


そして浅い方の棚。
以前から、夫が使っていたプラスティックの箱を活かし、百均の籠も使って、あちこちに、コンテナに入ったまま積み上げられていた、電気工事用の消耗品などを整理しました。
 

さて、この上にどう棚をつくるか、収納するものを分類しているうちに、なんとなく見えてくると思います。
まずは、夫が「片づけた」と称してコンテナに入れてある、めちゃめちゃに入り混じっている「もの」たちをきちんと分類するところから手をつけなくてはなりません。








2017年10月18日水曜日

マネーキー

河上目呂二(1886-1959)は、明治半ばから敗戦後まで、激動の時代に生きたにもかかわらず、大変な趣味人でした。


彫刻家であり、文筆家でありましたが、猫好きで、招き猫の収集家でもありました。
自分でも、全国各地の郷土玩具の招き猫を、小さくしてつくったり、自作の招き猫をつくったりしました。
愛好家の間では着物を着て艶然と笑っている「芸者招き」が有名で、「日本招猫倶楽部」では、2010年に、その芸者招きの復刻猫をつくったことがあり、私も手に入れていましたが、3.11であえなく粉々になってしまいました。


そんな、目呂二のマネーキーです。
「マネー」と「キー」を持っていて、マネーキー(=招き)という、ダジャレ猫です。
招き猫ミュージアムの復刻版で、これも持っていましたが、やはり、3.11で割れてしまったのを、買いなおしたものです。


両手の模様も、背中の模様も、ハート形です。
台座には、ゴッド・メーカー・みょうちきりんと書いてあります。


そして、上から見ると、頭の模様もハート形、


目の上にもハート形があって、目呂二の遊び心が満載です。
私の祖父くらいの年代ですが、こんな人もいたと思うと、楽しくなります。








2017年10月17日火曜日

『手わざ帖』


西表島の『手わざ帖』(NPO西表島エコツーリズム協会編)三部作です。
一冊目はアダンとマーニ(クロツグ、Arenga ryukyuensis)を使った、いろいろな細工ものを紹介しています。
 

アダンの葉でつくるゴザや籠は知っていましたが、芯が食べられることや、


気根からよい繊維が採れることは、全然知りませんでした。


マーニ(クロツグ)です。
マーニの芯は、生で食べられるそうです。ヤシは、素晴らしい!


私の持っているカエルと指ハブは、マーニでできています。


『手わざ帖』の二冊目は、わら、竹、すすき細工です。
竹の種類は違いますが、この巻に紹介されている細工の材料は、全国どこでも手に入りやすいものばかりです。


すすきの箒は、ちょうど今がつくり時でしょうか。


三冊目は、クバ(ビロウ、Livistona chinensis)、ピデ(コシダ、Dicranopteris linearis)のほかに、ソテツ、月桃、茅、芭蕉などの細工が紹介されています。


ビロウは、シネンシスとありますから、東アジアの種だと思います。東南アジアのビンロウ(Areca catechu)とは科も違いますし、木姿も葉も似ていません。
でも、タイ南部にもそっくりの、葉っぱの水くみ(つるべ)があります。

『THAI FORMS』より

我が家にもありましたが、留守宅を息子に提供していた時、息子の犬(最終的には我が家に来たアルシ)が齧ってしまったのか、失われてしまいました。
『THAI FORMS』のキャプションには、材料が「ヤシの葉」と書いてあるだけ、私はココヤシの葉と思っていましたが、ビロウに似た葉で、ココヤシではなかったのかもしれません。


クバの水くみだけでなく、ひしゃくも素敵です。


ソテツの葉や月桃の葉でも、いろいろなものがつくれるようです。
以前アダンの葉の茣蓙を使っていましたが、月桃でも茣蓙が編めるようです。

『手わざ帖』は、薄くてハンディです。
キャンプなどに持っていくと、すぐ楽しめそうな反面、あまりにも素人編集的で、美しい本ではないのが残念です。同様の内容で、フィリピンやタイには、美しい、手元に置いておいて何度もページをめくってみたいという本があります。
日本では、ハウトゥーものと言われる本が、出版物のうちの大きな割合を占めています。それらはやがて、膨大なネットの情報には太刀打ちできなくなって消えていくかもしれません。工作やお料理のレシピは必要な時だけ見ることができるし、動画でさえ見ることができます。
だからこそ、それを逆手にとって、ネットでは得られない、魅力にあふれた美しい本をつくる時代が来ていると思います。
これが、そんな、美しい本だったら、どんなによかったことでしょう。


と言っても、なかなかいい本でした。そして、この写真は素敵でした。