2009年12月12日土曜日

エチオピアの籠



エチオピアの籠です。

世界で、籠の材料には、竹、蔓(アケビ、マタタビ、その他)、ラタン(ヤシの一種)、草(藺草、ギニアグラス、その他)、木の皮、木の枝(柳、その他)、へぎ木、木の葉や柄(ヤシ、アダン、その他)などが使われています。
アジアでは竹籠が一般的ですが、アフリカでは草籠がもっとも一般的です。

このエチオピアの籠も、地面に生えているごわごわした芝(ギニアグラス)の穂を摘み採り、その茎を数本芯にしながら、太い針に通した別の茎で、ぐるぐると巻きながらつくります。

この籠の、直径は22センチほどありますが、エチオピアの人たちの主食であるインジェラを乗せる籠を模して、小型にしたものです。実際に使われている籠は、直径が60センチくらい、丈も高く、そのままテーブルになる大きさです。

エチオピアの国土は数千メートルの高低差があり、住んでいる地域によって主食も違います。小麦を主食にする人たち、エンセーテという芭蕉の茎から採れるでんぷんを主食としている人たちもいますが、アディスアベバをはじめとする都会の人々にとっては、インジェラが大切な主食であり、ごちそうです。




インジェラの材料のテフは、世界でもっとも粒の小さい穀物です。左のゴマと比べてみると、その粒の小ささがわかります。あまり小さくて、風に飛ばされ易いので、半分ほどが収穫時に失われてしまうとさえ言われています。
お米ですら、ごみを取り除いてきれいにするのがたいへんなのに、この小ささでは、気が遠くなりそうです。

インジェラは、テフを粉にして、水でこね、寝かせて発酵させ、薄くのばして、クレープのように焼いてつくります。
それを何枚か重ねて籠に敷き、その上にワットと呼ばれる肉や野菜のカレーのようなものを乗せて、みんなでこの籠を囲んで、手でちぎって食べます。

エチオピアは赤道に近いところに位置していますが、高地が多く、疫病から比較的安全なため、歴史的にたくさんの人口を養ってきました。
人口が多いということは、薪の消費量も多く、耕地も多く必要なことですから、森林はほぼ消滅し、そのため土壌流失が深刻で、近年は、しばしば飢餓に見舞われています。森林は、確か、国土の5%以下ではなかったでしょうか。

テフは霜にやられ易く、リスクの大きい作物ですが、人々は自分の食料である小麦をつくるより、高く売れるテフをつくりたがります。そのことが、より飢餓に弱い体質をつくりだします。




これは、エチオピアの南部で手に入れた蓋つきの籠です。あまり見かけない形ですが、大胆な模様が素敵でした。蓋の取っ手はひょうたんです。




これは、エチオピアの隣国スーダンの草籠です。夫のお土産です。
夫は仕事で、いろいろな国に行きました。最初、なかなか気に入るお土産を買ってきてくれないこともありましたが、いつのまにか、いつも素敵なものを見つけてきてくれるようになりました。
もっとも、ものに執着しない夫は、この籠を自分が買ってきたことすら忘れているでしょう。
いまから、20年ほど前のことです。スーダン内戦の前のことでした。

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