2011年2月2日水曜日

しわ伸ばし



母方の祖母は、几帳面な人で、下着にまでアイロンをかけていたそうです。そんな人だから早くから電気アイロンを持っていました。
でも、母が小さい頃は、まだ電気アイロンはなくて、ほぼ乾いた洗濯物に糊をして、きれいに畳んでござに挟み、座布団などで重しをして、その上を歩いて「押し」をするのは子どもたちの役目だったそうです。

母が嫁いでみたら、父方の祖母は、火熨斗を使っていました。
炭を入れて使うアイロンもありましたが、もっぱら使っているのは火熨斗で、アイロンはまっ茶色に錆びていたそうです。




火熨斗は、柄杓のような形をしていて、中に炭を入れて使います。




底は心持ち中心が高くなっていて、つるつるに磨いてあります。
しかし、炭の温度を一定に保つことは難しく、温度が下がればしわが伸びず、火熨斗は使いにくいものだったようです。

それにしても、なぜ、「アイロンは鉄でできているのに、火熨斗は真鍮でできているのか」、というのが母の素朴な疑問です。




この火熨斗は、炭を置くところが桜の模様になっています。おしゃれ!




私が物心ついたころには、電気のアイロンがありましたので、火熨斗の記憶はありませんが、伸子張りのことはよく覚えています。
反物の幅よりちょっと長い竹の棒の両端に短い針がついているのが伸子です。

母は伸子を打つのがじょうずでした。
着物をほどいて、つないで長い一枚の布にしてから洗い、布のミミに一寸おきくらいに伸子を打っていくと、布はぴんと張り、長い長い凧のようになります。
それを干して、風に揺られているのを見るのは楽しいのですが、うっかり近づくと、突き出ている針で、痛い目にあいます。




この伸子の竹の棒はちっとも曲がっていなくて、まっすぐなので、一度も使われたことのない、デッドストックだったのでしょう。
これで一反分だと思います。




着物を縫うときは、コテが必要です。
小さいアイロン型のコテ先に長い柄がついていて、それを火鉢の熾った炭の上に置いておきます。そして、折り目をつけたいときに、霧を吹いてから、「じゅっ」と、熱したコテをあてます。

このコテはアイロン型をしていなくて、珍しい形をしています。
和裁を仕事としていた人の、袖下の丸みを出すための専用のコテだったのでしょうか?
鉄でなくて真鍮でできています。




それにしても、コテ先の美しいこと。

どれも骨董市で見つけました。




で、私の使っているアイロンは、我が家で骨董化しているところです。
ここに来る前は、いつもアイロンが必要な服を着ていたので、出番が多かったのですが、いまのTシャツとフリースの着たきり生活では、めったに出動しません。




もう30年来、中国籠に入れて収納しています。



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