2013年11月8日金曜日

『銃・病原菌・鉄』


もと同僚のIくんから、『銃・病原菌・鉄』(ジャレド・ダイアモンド著、倉骨彰訳、草思社文庫、2012年)がおもしろいと聞いたのは、背骨を打って入院する直前でした。
そして、注文しておいたものが、届いたときは病院のベッドの上。内容が内容なので、病んでいる身では、ちゃっちゃとは読み進められませんでしたが、確かに人類史としては画期的なものだと思いました。

アメリカ人の書いたものですが、キリスト教をバックボーンにして、西洋中心の人類史を書いたものではなく、狭い地球が今、このような力関係になっているのは何故だろうかと、いろいろな分野の学問の成果をつき合わせながら、1万3000年にわたる人類史のなぞ解きをしています。

「どうして、より平等で、より民主的な共同体は、西欧列強に直面したときに、もろくも破れ去るのだろう。そして、より過酷な競争社会へと突入するのだろう」
「人はいったい何を求めて、生きているのだろう」
などなど、日ごろから疑問に思いながらも、すぱっと回答を出せなかった事柄が、この本を読むと、どんどん腑に落ちて行きました。


それにしても、これまでに地球上で飼育化されたり栽培化された動植物の量の少なさには、改めて驚かされます。ある地域に住む人が、身近にあるものを飼育化したり栽培化したりするのですが、食べられるものでさえ、栽培化に適していない植物の方が、圧倒的に多いのです。

身近に飼育や栽培に適した動植物がいろいろあったという意味で、生活の変化を起こすのに有利だったのはメソポタミア地域です。小麦、エンドウ、羊、山羊などが、地球上で最も早い、紀元前8500年ごろ飼育化、栽培化されています。そのメソポタミアを含めて、食料生産を独自にはじめた地域は、世界にほんの数ヶ所しかありません。

あとは伝播によって広がったものばかりです。
その伝播は、同緯度に沿って東西には、温度など条件が似ているので比較的容易ですが、南北方向には、時間がかかったり、不可能だったりします。
その意味で、アメリカ大陸やアフリカ大陸は、ユーラシア大陸に比べて、ずっと不利だったのです。


余剰食料ができるということは、人口の増加につながります。人口増加が階層分化をうながし、首長などとともに、学者、軍人、職人など、食料生産に携わらない人たちを養うことができる社会が出現します。それが文字の発見や武器の製作・使用へとつながっていきました。

また、大航海時代に、アメリカ大陸でたくさんの人々が殺されたばかりではなく、新たに持ち込まれた病原菌で死に絶えましたが、病原菌は常に家畜からもたらされるので、長年家畜の飼育をしていた人たちは、免疫力がついていて、圧倒的に有利だったのです。

と、この本を読むと、動植物の家畜化と栽培化がいち早く行われ、そのコンビネーションで人口を増やしたユーラシア大陸に発祥した文明が、世界で主導権を握った経緯はよく理解できました。しかし、現実にはかつてない地球規模の競争社会が、物理的にも精神的にも行き詰まりを見せています。

さて、どうすればいいのか?
みんながみんな同じ方向を目指せば、優劣、強弱ができます。みんながそれぞれの方向を目指し、競争せずに自分の道を行き、それを認め合う社会、そんな社会は、どうすれば構築できるのか。人間一人ひとりにつきつけられた課題だと思いました。



2 件のコメント:

Piku さんのコメント...

むむむむむ〜面白そう〜。
早速、注文しました〜

さんのコメント...

Pikuさん
もし、小麦、大豆、米、トウモロコシなどが栽培化されなかったら、今の世界はなかったとか、家畜化できる動物はほんの少数で、例えばシマウマなどは、その性質上家畜化できないとか、ほんの些細な違いが大きくあとを引く(差が出てくる)というのが、面白かったです。