2015年2月22日日曜日

アフリカのプリント布

1960年代にガーナで暮して、ガーナ人の女性の来ている服が素晴らしいと思いました。
工場製のプリント地でしたが、なんとなくろうけつ染を思い出すような、ひびの入ったような仕上がりで、白地に、紺(藍)、黄色、黒、茶色と言った渋い配色が、褐色の肌によく似合っていました。

布は、切り売りではなく、あらかじめ6ヤードに切ったものを売っていました。
聞いたことがないので推測ですが、ガーナの女性たちはそれを三等分して、一枚はブラウスを着た上から腰に巻き、ウエストあたりにさらに一枚巻いてお財布代わりにして、残りの一枚を頭に巻いていたのではないかと思います。
腰布は、二枚に切らなくて、つながった長いものだったかもしれません。よく、彼女たちは腰のあたりの布を広げて、お金を取り出したりしていました。もちろん布は風呂敷代わり、日傘代わり、赤ちゃんの背負い紐、揺りかごなどなど、いろいろに使えました。

魚の模様、鳥の模様などなど、人が身につけていると素敵なのに、残念ながら、市場の布売り場では「これは」と思う布には出逢いませんでした。たぶん、その時その時の流行があり、私が好ましいと思った柄は、ちょっと前に流行った柄だったのかもしれません。

私がガーナの工場製の布を手にしたのは、それから四半世紀も経ってからでした。
元同僚のOさんは、1990年代に青年海外協力隊でガーナに二年行っていたのですが、私が布好きなのを知っていて、自分が買ってきた布を、
「何にもする予定がないから、使って」
と言って、くれたのです。まさに、私が欲しいと思っていたような布でした。


インドネシアの、更紗(バティク)を彷彿とさせる模様です。

これら、西アフリカや中央アフリカで愛されている布は、「ワックスプリント」と呼ばれる布で、機械で生地の両面に樹脂をつ けて防染したあと、染色桶に入れて染め、樹脂を洗い落としてから、再度、木版ブロックやローラー機械などで色を足す方法でつくられます。

ワックスプリントは、もともとはインドネシアのバティクを模倣したものでしたが、ヨーロッパでつくられたアフリカ向けの布として、模様の中に独特の世界観を築き上げてきたものです。


Oさんにもらった布は、ガーナ製です。
でも、私がいたころは、ガーナ製の布もありましたが、よく見かけたのはオランダ製の布でした。当時は、どうしてオランダ製の布がアフリカに来ているのか、全然、見当もつきませんでした。
それが、年をとったということか、今になるとおぼろげながらどうしてだかが見えてきます。

インド更紗を真似たヨーロッパ更紗のうち、イギリスのリバティーやフランスのソレイアードはヨーロッパで市場を伸ばしましたが、ヨーロッパでは市場を伸ばせなかったロシア更紗が中央アジアに市場を見つけたように、オランダ更紗はアフリカに市場を見出していたのに違いありません。
ただ、それを当初は何と交換したのか、金と交換したのか、奴隷と交換したのか、あまり考えたくない問題ではあります。


魚模様は、1960年代からいろいろなバリエーションがあった、素敵なモチーフです。
Oさんにもらった布は、鋏を入れることができず、布のまま箪笥の肥やしになっていますが、取り出して眺めるたびに喧噪のガーナの市場が思い出されます。


東アフリカに流通しているキテンゲは、タンザニア語で「連続柄プリント布」を意味した名前です。
タンザニアでは、ロータリースクリーン・プリントによる捺染で製作されています。


プリント方法や品質の点では、ワックスプリントのほうが断然優れています。ワックスプリントは裏も表同様に染められていて、裏表がないのに対して、キテンゲの染めつけは表だけです。
布も、目の詰まった布ではなくて、キテンゲの方が品質が劣ります。


ただ、大胆な模様はなかなか魅力的で、しかも、やはりタンザニアの布のカンガ同様、模様に名前がついていたりします。
これは、「笑う花」だったか、腰巻にする布ですから、模様は横向きについていて、上下に布の「みみ」がきています。


これも、タンザニアのキテンゲです。

今、タンザニアでは、インドネシア製のキテンゲが高級品とされているらしい、コンゴ製も出回っているそうです。
インドネシアでは、手描きのバティクを買えない人のために、プリントのバティクが長くつくられてきました。中には手描きと見まごうような、技術の高いものもあります。
もちろん裏にも染料が行きわたって、染めも堅牢です。
 

インドネシア製のキテンゲを実際に見たことがないので、裏がどうなっているかわかりませんが、タンザニア製のキテンゲの裏は、いかにも裏らしいものです。

キテンゲは、惜しげなく使いたいと思って買いました。
布をたっぷり使ったワンピースがいいかな、それとも上下にわけて、パンジャブ・スーツというより、ナイジェリアの男性が来ているような服がいいかななんて、考えて楽しんでいるうちにどんどん時間が経ち、仕立てる可能性は小さくなる一方です。
「普段着は十分あるしなぁ」
外出着も、ほとんど外出しないので、昔のものが今も着られる状態で、いろいろあります。





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