2015年9月10日木曜日

日本文、翻訳文


この夏、デンマークに行ったとき、行き帰りの飛行機の中での退屈を思って、本を二冊持って行きました。
一冊は出たばかりの『為吉』(宇江佐真理著、実業之日本社、2015年)、

 
もう一冊は、読みかけだった『遺失物管理所』(ジークフリード・レンツ著、松永美穂訳、新潮社、2005年)でした。
『為吉』も、『遺失物管理所』も、旅のお伴としては、なかなかのものでした。

手元にこの二冊しかなかったせいか、改めて翻訳ものと日本の小説とは、まったく別のものであることを実感しました。
どんなに名訳であっても、翻訳には翻訳の文体というものが、厳然と存在するということは、あまり考えたことがありませんでした。
なんだろう、どちらも日本語ですが、違います。
今度、自分でも書くし、翻訳もする人の文を、機会があったら読み比べてみようかと思いますが、機会があるかどうか。
例えば井伏鱒二、『ドリトル先生』は読みましたが、井伏自身の書いたものは、たぶん読んだことがありません。そして、例えば村上春樹、彼の小説が嫌いなので(エッセーは好き)、彼の翻訳したものも、読む気が起こりません。


日本に帰ってから、『冥土あり』(長野まゆみ著、講談社、2015年)を読んで、さらに感じてしまいました。
「わぁ、この本は日本語がきれい。文がきれい」

そこで、このところ逗留している息子とそんな話をしてみました。
息子の好きな本は、『ドリトル先生』、『ドンキホーテ』、「トムソーヤーの冒険』や『ハックルベリーの冒険』などの古典、そして『百年の孤独』や『第九軍団のワシ』などなどで、断然翻訳派なのです。

「日本の小説って、どれを漢字にして、どれをひらがなにするかとか、いろいろあってさ、ほらここ、「ほんとう」ってひらがなになっているだろう。それで感じを出せるんだよ。それから、長い文と短い文を組み合わせるとか、いろいろテクニックがあってね。でも、おれは読んでてそれをすぐ感じてしまうから、うんざりして、日本の小説はあまり好きじゃないんだ」


さて、『遺失物管理所』の英語版の表紙は、あっさりしたものです。
日本語版も、負けず劣らずあっさりしていますが、それにカバーがかかっています。カバーをかけるのは、日本の習慣ですが、カバーに目を留めて関心を持つ人もいそう、何を隠そうこの私がそうでした。


『遺失物管理所』のカバーの絵は、印字を入れる引き出しを飾り棚にしたものでした。
全体につややかで、棚のつくりが複雑なので、撮影のために、印字引き出しに似せてつくった可能性の方が大きいかもしれませんが。
小さいものが好きな私は、目を凝らして何が飾られているか見ましたが、よだれが出るほどのものが飾られてはいるわけではないようです。


そして、我が家の印字の引き出しの飾り棚
大きさに制約のある棚に飾るものは限られますが、それゆえのおもしろさもあります。


一番上の左の端は、ブリキの煙草入れです。
マサイの人がナイロビの路上の市場で、確かこれだけを売っていました。値段を聞いたら高い!もっとも、冷静に考えるとそう高くはないのですが、その日は諦めました。それでも諦めきれず、次の日か、次の次の日に行って、とうとう買ったものでした。




4 件のコメント:

Blue moon さんのコメント...

ヤム・マクアを作って食べました。美味しかったです!

本のタイトルを見て谷川俊太郎さんの詩の一節を思い出して、表紙を見て以前に読んだブログ「小さなもののための飾りだな」を思い出しました。「小さなもののための飾りだな」の写真、いいなぁ、ほしいなぁとうっとり見ていました。自分ちの壁にも作ることができるかなと持っている小物を調べましたが品揃えなしでした(笑) ブリキの煙草入れなんですね、見ただけではわかりませんでした。じっと見てしまったのは、いちばん下の右端のものでした(笑)

大阪に国立民俗学博物館があります。長年お世話になっている先生の息子さんが森鴎外の役で出演された台湾映画『一八九五』が国立民俗学博物館で上映されます。よろしければ国立民俗学博物館ホームページをご覧下さい。http://www.minpaku.ac.jp/museum/event/fs/movies150923taiwan

さんのコメント...

blue moonさん
右下にクロックがありましたね(笑)タイのままごと道具にクロックは欠かせません。(http://koharu2009.blogspot.jp/2010/02/blog-post_23.htmlとか、http://koharu2009.blogspot.jp/2014/01/blog-post_9093.html)。
小さいものは、見失いがちで困ったりする反面、小さな棚に飾るとおもしろいです。
さて、民博は長い間会員になっていて、『民族学』という冊子が送られてくるのを楽しみにしていました。一度だけ行ったこともあります。ただ、遠い!(笑)フットワークの軽い時でさえ、遠かったです。
『一八九五』はとっても関心がありますが、遠いです。出張して欲しいくらいです。昔はアジア映画祭は欠かさず見に行ったものですが、今は東京も遠い(笑)。
ネット時代は良し悪しですかね。どこにも行かないでも満足して暮らしています(笑)。

Blue moon さんのコメント...

(ちょっといろいろありましてコメントが遅くなりました) 国立民族学博物館をご存知だと思っていましたが会員さんだったのですね。さすがです。

映画会始まって以来の人出だったようです。映画をご覧になった知人男性さんから、こんなメールを頂きました。「会場は人であふれ本会場に入りきれないため小ホール2か所急きょ用意されるほどの人気に主催者側もてんやわんやでした。台湾との歴史にふれ知らなかったことが多く興味深く観る事ができ日本軍の扱いも悪意なく描かれ、客家人のパーソナリティに照準が当てられていて、若き軍医森鴎外の視点から見た現実の歴史にふれる事が出来ました。またご案内の、貴島功一朗さんに会場内でお会いする事ができました。すごいイケメンで皆さんに囲まれて楽しそうに談笑されていましたよ!」
サンケイ新聞8月25日朝刊の切り抜きです。映画に関してのことが書いてあります。お近くで上映があればよいのですが。http://home.exetel.com.au/belley/erika/images/1895.jpg

さんのコメント...

Blue moonさん
人気でよかったですね。国立民族学博物館とまでは行かないけれど、東京江戸博物館も佐倉の国立歴史民俗博物館もおもしろいけれど、そう遠くはないんだけれど、最近はとんと足が向いていません。
映画は、こちらにも来るかなあ?
次の次の日曜日には、インドのサティシュ・クマールとヴァンダナ・シヴァの映画を見ます。といっても、撮ったのは日本人だけれど(笑)。映画は久しぶりかな。